「竹富島憲章」
毎年3月31日は、18歳以上の竹富島民が会員である
竹富公民館定期総会の日にあたります。
平成28年度竹富公民館定期総会では、
制定30周年を迎えた「竹富島憲章」を改定し、新たな文言で憲章を制定しました。
今回は、理念や精神はそのまま引き継ぎつつ、
現在の暮らしに沿った文言に改定された、「竹富島憲章」をご紹介します。
「竹富島憲章」
平成29年4月1日 地縁団体法人 竹富公民館
・前 文
私たちが、祖先から受け継いだ、
まれにみるすぐれた伝統文化と美しい自然環境は、
国の重要無形民俗文化財(※1)、重要伝統的建造物群(※2)、重要文化財(※3)として、
また国立公園として、
島民のみならずわが国にとってもかけがえのない貴重な財産となっている。
私たち竹富人は、
無節操な開発、近代化にともなう破壊が島の心までをも蹂躙することを憂い、
これを防止してきたが、
美しい島、
誇るべきふるさとを活力あるものとして後世へと引き継いでいくためにも、
あらためて「かしくさや うつぐみどぅ まさる」の心で
島を活かす方策を講じなければならない。
私たちは今後とも竹富島の文化と自然を守り、
住民のために活かすべく、ここに竹富島住民の総意に基づきこの憲章を制定する。
※1「竹富島の種子取」昭和52年(1977)5月17日指定
※2「竹富町竹富島重要伝統的建造物群保存地区」昭和62年(1987)4月28日選定
※3「旧與那國家住宅」平成19年(2007)12月4日指定
・保存優先の基本理念
竹富島を活かす島づくりは、すぐれた文化と美しさの保存が
すべてに優先されることを基本理念として、次の原則を守る。
1.「売らない」島の土地や家などを島外の者に売ったり、無秩序に貸したりしない。
2.「汚さない」海や浜辺、集落など島全体を汚さない。また、汚させない。
3.「乱さない」集落内、道路、海岸などの美観を、広告、看板、
その他のもので乱さない。また、島の風紀を乱させない。
4.「壊さない」独特の農村集落景観、美しい自然環境を壊さない。
また、壊させない。
5.「活かす」 伝統的祭事行事を、島民の精神的支柱として、民俗芸能、
地場産業を活かし、島の振興を図る。
一、美しい島を守る
竹富島が美しいといわれるのは、
沖縄の古い農村集落景観を最も良く残し、美しい海に囲まれているからである。
これを保つために次のことを守り、守らせる。
1.建物の新・改・増築、修繕は、伝統的な技術と様式を踏襲する。
2.屋敷囲いは、サンゴ石灰岩による従来の野面積みとする。
3.広告、ポスター等は、むやみに掲示しない。
4.樹木は、伐採せず植栽に努める。
5.交通安全、道路維持のために、集落内への車両乗り入れを極力避ける。
6.海岸、道路などにゴミ、空きカン、吸い殻などを捨てない、捨てさせない。
7.空き家、空き屋敷の所有者は、地元で管理人を指定し、清掃及び活用を図る。
8.観光客のキャンプ、野宿は禁止する。
9.草花、蝶、魚貝、その他の生物をむやみに採取することを禁止する。
二、秩序ある島を守る
竹富島が、本土や本島にない魅力があるのは、
その静けさ、秩序のとれた落ち着き、善良な風俗が保たれているためである。
これを保つために次のことを守り、守らせる。
1.島内の静けさを保つために、物売り、宣伝、車両等の騒音を制限する。
2.海水浴場等以外での水着、裸身は禁止する。
3.標識、案内板等は公民館の許可を得て設ける。
4.車輌は、常に安全を確認しながら徐行する。
また、環状線においては安全速度を遵守する。
5.島内の清掃に努め、関係機関による保健衛生、防火訓練を受ける。
6.水、電気等資源の消費は最小限に努める。
7.映画、テレビ、その他マスコミの取材は公民館へ届け出る。
8.自主的な防犯体制を確立する。
三、観光関連事業者の心得
竹富島のすぐれた美しさ、豊かな人情と魅力をいかすには
旅館、民宿、飲食店等、また、施設、土産品店、運送業など
観光関連業事業者の規律ある接遇は大きな影響がある。
観光業もまた島の振興に大きく寄与するので、従事者も次のことを心得る。
1.島の歴史、文化を理解し接遇することで、来島者の印象を高める。
2.客引き、リベート等の商行為は行わない。
3.運送は、安全第一、ゆとりをもって行う。
4.看板は、公民館の許可を得て設置する。
5.賭け事等はさせない。
6.飲食物は、できるだけ島産物を使用し、心づくしの工夫をする。
7.23時以降は、島の平穏に努める。
8.土産品等は、島産品を優先する。
9.来島者に本憲章を理解してもらい、協力をお願いする。
四、島を活かすために
竹富島のすぐれた良さを活かしながら、住民の生活を豊かにするために、
牧畜、養殖漁業、養蚕、薬草、染織原材料など一次産業の振興に力を入れ、
祖先から受け継いだまちなみや伝統工芸を活かし、祭事行事、芸能を守っていく。
1.伝統的祭事・行事には、精神的文化を学び、積極的に参加する。
2.伝統工芸に必要な諸原料の栽培育成を促進し、原則として島内産物で製作する。
3.創意工夫をこらし、技術後継者の養成に努める。
4.まちなみを形づくってきた技術、経験を継承していく。
5.観光業は、島本来の姿を活かしながら推進していく。
6.製作、遊び、行事などを通して子ども達に島の心を伝えていく。
五、竹富島を守るために
竹富島は、もともと島民が、
こつこつと積み上げてきた手づくりの良さが評価されてきたのである。
外部の資本が入れば島の本質は破壊され、
民芸や観光による収益も住民に還元されることはない。
集落景観保存も島外資本の利益のために行うのではないことを認識し、
次に掲げる事項は、事前に公民館と調整委員会に届け出なければならない。
1.不動産を売買しようとするとき。
2.所有者が、名義を変更しようとするとき。
3.土地の地番、地目、地積に異動が生ずるとき。
4.賃貸借をしようとするとき。
5.建造物の新・増・改築、取り壊しをしようとするとき。
6.その他風致に影響を及ぼす行為がなされようとしているとき。
この憲章を円滑に履行するために、
公民館内に集落景観保存調整委員会を設け、
町、県、国に対しても必要な措置を要請する。
昭和61年(1986)3月31日制定
平成29年(2017)3月31日改定
※ 参考 竹富町民憲章
昭和47年(1972)「竹富島を生かす憲章案」
昭和46年(1971)「妻籠宿を守る住民憲章」
上記の精神を引き継ぎ、修正、追加を行い、案を作成した。